マヌカオイル(精油)に含まれる化学物質は通常、次の4つのグループに分けられます。
この4つのうち、特に注目されるのがトリケトン類です(b)。北島のイーストケイプ地方と、イーストケイプほど広域ではありませんが、南島の北端、マールバラ・サウンズで採れるマヌカは、特にトリケトン含有量が高いのです(下部の地図を参照)。
トリケトン含有量の多いマヌカオイルには抗菌活性があります。たとえば、ブドウ球菌・リステリア菌・腸球菌などの細菌や、白癬菌・小胞子菌などの真菌類に対する抗菌力があり、さらに駆虫・殺虫活性があるのです。
イーストケイプのマヌカオイルには、他に類を見ない特性があります。それは黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌に対する抗菌活性や、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌活性です。
科学的な調査研究では、この特性はオイルに含まれるトリケトンの働きによるものであるとされています。この活性があるマヌカオイルは、外用として、また化粧品やパーソナルケア製品の成分として、広く使用されるようになってきました。
JCIが輸入するマヌカオイルはすべて、イーストケイプ地方で収穫・製造されたもので、現地の蒸留工場から直接取り寄せています。
図1:サンプル採取場所(1~87)とトリケトン濃度(赤色~緑色)
註
(a)ガスクロマトグラフィ分析による数値
(b)トリケトン類には、下位分類としてベータトリケトン(ベータ/βとはギリシャ文字のB)があります。マヌカオイル中のトリケトンは、このベータトリケトンに分類されます。ベータトリケトンには次の4種類があります。フラベソン (flavesone)、イソレプトスペルモン(isoleptospermone)、レプトスペルモン (leptospermone)、およびグランディフロロン(grandiflorone)です。
関連文献(仮訳)
(1)ダグラス・M.Hほか著「ニュージーランド産マヌカのエッセンシャルオイル:ギョリュウバイに含まれるトリケトンおよびその他のケモタイプ*」
『ファイトケミストリー』第65巻9 号 pp.1255-1264 2004年5月刊, エルゼビア
Douglas M.H., et al. "Essential oils from New Zealand manuka: triketone and other chemotypes of Leptospermum scoparium", Phytochemistry Vol.65, Issue 9 (2004), pp.1255-1264, Elsevier
(2)Douglas M.H., et al. "Defining the North Island manuka chemotype resources – a survey report".(タイトル仮訳「北島産マヌカのケモタイプ源の定義:調査報告」)Crop & Food Research Report No. 447 (2001). New Zealand Institute for Crop & Food Research Limited.
*この調査報告書はNZ政府農林省(Ministry of Agriculture and Forestry, MAF)による「持続可能な農業のための基金」準備の一環として作成されたものである。MAFは2012年、現在の第一次産業省に統合された。
**ケモタイプの定義は、「形態的に区別できない個体群の中で、化学的に特徴づけられた部分」。学名が全く同じ植物から抽出されても、生育環境が異なることにより、特徴成分が異なる精油を指す。
Triketone strength by region | updated 2022.1.31