マヌカはちみつのUMFとMGOという格付けがどのように異なるのか、というご質問をいただくことがあります。お答えいたしましょう(1-3)。
どちらも格付け方式です。UMFは、ユニークマヌカファクターはちみつ協会(Unique Manuka Factor Honey Association, 略称UMFHA)が使用している格付けです。UMFHAは1998年にこの方式を採用しました。
そのおよそ10年後、マヌカへルス・ニュージーランド社(Manuka Health New Zealand Ltd)が用いるようになった格付けがMGOです。しかし最近、UMFHA加入会社もMGO格付けシステムを使用することが一般的になりました。すなわち、商品ラベルにUMF数値とMGO数値の両方を表記しています。
当初は、UMFとMGOの分析方法は異なっていたのですが、現在ではいずれも全く同じ手法で分析しています。モソップ社製ならびにタヒ・エステート社製のUMFマヌカを調査したラボ報告書には、UMF値とMGO含有量の両方が記載されています。UMFHA加盟業者の大半は、容器にUMFとMGOの双方を表示しています。
2008年4月、ニュージーランドの科学者がUMFとMGOの相関関係をあきらかにしました。この相関関係は、UMF4から26までについて表示してあります(4)。
残念ながらUMFとMGOという競合する格付けシステムがあることが、悪質な業者がオンライン・ストアで、UMF格付けあるいはMGO含有量を過大に表示するきっかけとなってしまいました。
マヌカはちみつの製造者・パッキング業者が、格付けシステムを統一するのが理想だとは言えます。
しかしUMFHAは登録商標であるUMFが世界中で認識されているブランドであること、マヌカはちみつに活性を与える物質について新たな科学的発見があった場合、格付けにその新たな物質を追加できること、という二つの理由で、マヌカはちみつUMF表示をやめる意向はありません。
出典: Analytica Laboratories
(1)NPA(過酸化物によらない活性)対マヌカハニーに含まれるメチルグリオキサール
(2)メチルグリオキサール濃度(mg/kg)
(3)UMFの単位として表示される過酸化物によらない活性(NPA値とUMF値は同一)
(4)MGOからUMFへの換算には次の式をご利用になれます。
(MGO^0.603)*0.348=UMF。
註
(1)UMFは「ユニークマヌカファクターUnique Manuka Factor」のイニシャルです。UMFHAは1998年8月、UMFを商標登録しました。
(2)MGOとMGはともにメチルグリオキサールの略語です。ではどうして同一の物質にふたつの略語があるのでしょうか? ニュージーランドのはちみつ業界では、マヌカヘルス・ニュージーランド社がMGOを商標登録しているので、同社以外はMGOという略語を使用できないと考える人が多いからだ、というのがJCIの見解です。ところが実際の商標登録の書類を調べてみたところ、マヌカヘルス・ニュージーランド社が商標登録しているのは、MGOの文字をふたつの六角形が囲んでいる図柄だけであることがわかりました。
同社は商標登録の書類で、MGOという文字列が第三者により使用されることについては異議を唱えないことを明言しています(2007年 7月18日登録、IP番号770095 参照)。したがって、本来は必要がなかった「MG」という略称が作られたことで、マヌカはちみつの格付にさらなる混乱が持ち込まれました。マヌカはちみつ業界ではMGOもMGもともに広く使用されていますが、JCIではMGOのほうがより浸透している用語だと考えています。
(3)マヌカヘルス・ニュージーランド社は2006年に法人格を取得しました。同社はパッキング業者としてニュージーランド国内本社を置いていますが、2018年にマレーシアの複合企業ホンリョンHong Leong Companyがマヌカヘルス・ニュージーランドを完全に買収しました。マヌカヘルス・ニュージーランド社はドレスデン工科大学・食品化学研究所(ドイツ)が、マヌカはちみつの抗菌力は主としてメチルグリオキサールによるものであることを解明した後で、MGO格付けシステムを開始しました。
(4)"Isolation by HPLC and characterization of bioactive fraction of New Zealand manuka
(Leptsospermum scopariam) honey". Adams, C.J., et al. Carbohydrade Research (2008).
And: Corrigendum to "Isolation by HPLC and characterization of bioactive..." Carbohydrade Research (2008). Adams C. J. et al. Carbohydrade Research (2009).
(5)2011年にオーストラリアの医学研究者が、メチルグリオキサールだけがマヌカはちみつに抗菌性をもたらしているのではないことを示しました。
"Methylglyoxal-Infused Honey Mimics the Anti-Staphylococcus aureus Biofilm Activity of Manuka Honey: Potential Implication in Chronic Rhinosinusitis". Jervis-Bardy, J., et al. The Laryngoscope (2011). 論文タイトル仮訳)「メチルグリオキサールを注入したはちみつ、黄色ブドウ球菌に対する抗菌力を持つマヌカはちみつの生物膜活性を再現:慢性副鼻腔炎治療への利用可能性」執筆者Jervis-Bardy,J ほか。掲載誌The Laryngoscope (2011).
このようにこれまでには知られていなかった物質があらたに識別された場合、UMFという表示を用いていれば、UMFHAその新たな物質を格付けに反映させ、新たな知見にあわせて常にアップデートが可能です。一方でMGOの格付けでは、抗菌性をもたらす物質の一部しか表示できないことになってしまいます。