2017-2018期、NZ政府はマヌカはちみつの科学的な定義を発表しました。これはNZ内外で流通する粗悪マヌカ・偽マヌカ・虚偽表示のマヌカ一掃を目標とした規制の一環でした(1)。
NZの養蜂業界でも、定評あるまともな企業は、勝手放題でばらばらなマヌカ業界を規制するよう、2012年ごろから政府にはたらきかけてきました。
「定評あるまともな企業」と、まともな企業から派生して不正を行うようになった製造者・貿易商を峻別するのは非常に困難でした。そもそも何を「マヌカ」とするのかをめぐる議論とは別に、格付けのシステムが曖昧であったことも、不正マヌカ流通をさらに容易にした一因です。
NZ国外では、「自社ブランド」(PB)の「マヌカはちみつ」を販売する業者が大きな利益をあげていましたが、こうした業者が販売していたはちみつは、実際はNZ産でさえなく、いっときそのありさまは、たとえばグッチのハンドバッグの様々な複製を、消費者のことなど考えもせず、また調査も規制もないまま販売するのにも等しいものでした。
最近では英国で売られている「マヌカ」と表示されたはちみつが、NZで製造されるすべての種類のはちみつの総量を上回ると考えられるというニュースもありました。これが本当であるなら、英国にとどまらず、海外市場はどこでも偽マヌカがあふれかえっていたということになります(2)。
よくある偽マヌカは、クローバーなどの安価なはちみつに、ごく微量のマヌカを混ぜたものです。真正のマヌカは粘度が高く濃いめの茶色をしていますが、よくある偽マヌカは水っぽく色も薄いのが特徴の一つです。
NZ国内の研究施設では、サンプルのマヌカが政府によるマヌカの定義に従っているかどうかの調査方法を開発するよう求められました。政府による定義には二つの区分があります。マヌカだけを蜜源とするモノ・フローラルか、マヌカ以外の蜜源も含まれるマルチ・フローラルかという区分です。
政府による定義では、マヌカの花みつが持つ4種類の物質の最低限度以上認められること、そしてマヌカ花粉由来のDNAマーカーが認められることが、マヌカはちみつである要件です。
残念ながら政府の規制には大きな抜け穴があります。たとえば上記のマヌカはちみつの定義は、NZから輸出する、小売り用容器に入った製品にのみ適用されます。
言いかえれば上記定義によれば「マヌカではない」はちみつであっても、卸し用バルクとしては輸出可能であり、したがって輸入業者が小分けのうえ、勝手に「マヌカ」と表示して小売りできるというわけです。これが、何種類かのオーストラリア製「マヌカ」
ブランドが急に登場した理由のひとつです。
NZ政府内には、マヌカのように高価な農産物のバルク輸出を禁じるべきであるという声もあります。これに同意する業界関係者もいますが、小売製品としての輸出よりも手間が少ないことにより、バルク輸出にこだわる業界関係者もいます。小売製品の場合、品質管理やブランド開発、マーケティングといった点で手間がかかるからです。
「用心しよう。そのマヌカは
ニセモノかもしれない」
英紙The Sunday Times. 2017年2月6日付
はちみつ輸出統計の領域では進展が見られます。2018年7月より、はちみつ輸出統計には、モノフローラル・マヌカとマルチフローラル・マヌカのサブカテゴリ内で、バルク輸出と小売用製品輸出が分けられました。2018年NZ税関は、マヌカはちみつについて合計9つのHSコードを導入しました。これは第一次産業省が導入したマヌカの科学的な定義に対応するためのものです。
こうしたことから考えれば、NZ内外で今後も偽マヌカが流通することは明らかでしょう。
皮肉なことに第一次産業省(MPI)の政策の柱であるマヌカの定義は、海外(つまりMPIが管理できない)むけの製品のみに適用されるものであり、国内(つまりMPIの管理下にある)で販売される商品については今のところこのマヌカの定義が適用されず、MPIの定義ではマヌカとは呼べない製品がマヌカとして販売されています。
モノフローラルであれマルチフローラルであれ、マヌカの定義に沿わなくてもよいとされています。これでは、NZ国内でMPIの定義からはずれたマヌカを小口で直接買い求め、それを海外市場の消費者に直接届けるというビジネスを阻むすべはありません。
このようなわけで、どのはちみつが「本物」のマヌカであるかという難しい決定は、NZ政府・輸出業者による規制では保護されない状態におかれ、消費者にゆだねられているといえます。
さてマヌカ輸入者として、JCIは以下の条件を満たす製造者に限り、取引をおこなって
います。
(i)すべてのバッチにラボ検査結果があり、したがって小売り用のどの製品についてもラボ検査結果が入手できること。
(ii)JCI側が製造者と実際に会い、また製造施設を実際に見学した上で、納得できる製造プロセスであると考えられること。
ページ右側の最初のタブで2004年から2014年にかけての偽マヌカについての新聞や雑誌での報道例がご覧になれます。これらの記事はマヌカに関する報道のごく一部にすぎません。
ページ右側にある「世界規模での食糧詐欺」のタブでは、全世界的問題である食糧詐欺についての概観を紹介してあります。食糧詐欺は古代からありました。 2019.3
参考文献
(1)New Zealand Ministry for Primary Industries
ニュージーランド第一次産業省ウェブサイト
https://www.mpi.govt.nz/growing-and-harvesting/honey-and-bees/manuka-honey/
2018年7月3日閲覧
(2)“Bee careful: that manuka honey may be fake”. Jonathan Leake. The Sunday Times (UK),
February 6, 2017.
「用心しよう。そのマヌカはニセモノかもしれない」リーク・ジョナサン
英紙The Sunday Times. 2017年2月6日付
関連文献
“Honey trap: New Zealand devises manuka test to fight fakes”. Eleanor Ainge Roy.
The Guardian (UK), 12 April 2017. Also reported by Newsweek (US) on 13 April 2017.
「ハニートラップ:ニュージーランド、にせマヌカとたたかうための検査を考案」
ロイ A. エリナー. The Guardian 紙2017年4月12日付
この記事は米誌『ニューズウィーク』にも掲載された。 2017年4月13日付
https://www.theguardian.com/world/2017/apr/12/honey-trap-new-zealand-devises-manuka-test-to-fight-fakes. 2018年7月3日閲覧
Fake manuka honey | updated 2022.3.14