海上輸送中の温度記録

タウランガ港
タウランガ港

ニュージーランド(以後NZの表記を使用)から船便で輸入されるはちみつは、貨物船が緯度ゼロ地点、すなわち赤道とその付近を航行することから、高温により品質が低下しているのではないかという懸念が、依然として小売業界内に存在します。

 

新型コロナウィルス蔓延の影響により、航空便料金が大幅に上昇する以前は、輸入業者によっては航空便のみを使用し、そのはちみつは「(船便で届くものとは異なり)高温による品質の低下がない」ことを売りにしてきました。

 

これまでそういう売り文句を用いていた業者のなかには、現況では冷蔵コンテナ船(リーファとも呼ばれる)ではちみつを輸入し、かつ以前と同じく「高温による品質の低下はない」と主張するところもあります。

 

輸送中の温度の記録を見れば、赤道付近航行時の気温が与える影響に対する懸念は杞憂であることがわかります。過去4年間、弊社が船便で輸入してきたはちみつカーゴのほぼすべてについての記録がありますが、その中には摂氏35度を上回る記録はひとつもありません。

 

(このページ右側にある「温度記録の例」では、JCIカーゴ6つ分の温度グラフがご覧になれます)(註1)

誤りの思い込み

「赤道」という、実際には目に見えない「緯度ゼロ地帯」が、非常な高温だという思い込みは誤りです。例えば南西アジアの陸上の赤道直下地点でも、自然下のみつばちの巣内の温度であるおよそ37度、つまり人間の体温程度よりも低いのです(註2)。

 

このことを理解するのに、ポンティアークの例が役に立つでしょう。ポンティアークはインドネシアの西カリマンタン州都で、ほぼ赤道直下にありますが、この都市の月間最高気温の年間平均は32.7 度、月間最低気温の年間平均は22.7度です(註3)。

 

陸上に比べると、海上の気温は数度低めであることから、NZから日本へ、赤道付近の海上を航行する際の気温は、ポンティアークよりも低いと考えられます。

 

温度記録装置
温度記録装置

カーボンフットプリント

冷凍・冷蔵設備を持つコンテナ(リーファ)のカーボン・フットプリントはとても大きいことをご存知でしょうか。これは冷蔵設備のモーターがディーゼル燃料を使用しているからです。コンテナのそれぞれにディーゼルを燃料とする発電モーターがついており、冷蔵のためのコンプレッサーに電力を供給しています。

 

ディーゼルの排気ガスの有毒性が高いことに加え、その排気ガスは甲板下の貨物庫の温度も上昇させます。このため、JCIのコンテナは、冷蔵コンテナから遠い、甲板上の陰がある部分に置いています。

陸上の冷蔵施設や、冷蔵機能をもつ小さなトラックなどは電化されていることもありますが、貨物船や世界中に荷を届ける冷蔵コンテナは、現在も大きくディーゼルに依存しています。

 

冷蔵コンテナは生の農産物を輸送する際に必要です。環境負荷の観点からも、弊社ははちみつを冷蔵輸送することは、現実を踏まえない宣伝効果を得るために、無駄に公害を出すことでしかないと考えています。

 

温度の影響をうけやすい加工食品の場合、断熱コンテナカバーが手頃な価格で利用できます。弊社ではこの断熱コンテナカバーを、マヌカロゼンジのカーゴに利用しています。弊社のこれまでの経験では、このカバーを使うと、カーゴ内の温度を5度から7度下げられることがわかっています。

 

実は、太平洋西部の赤道直下の海上の気温の、ありもしない影響よりも、炎暑と言える日本の夏期、はちみつを保存する影響の方がはるかに大きいのです(註4)。



JCIのカーゴは、タウランガ港から東京港大井埠頭へ直行便で輸送されます。地図提供:株式会社日本郵船


(1)JCIの仕入元は、カーゴが出荷のパレットに載った時点で温度記録装置を作動させます。日本側では、都内にあるJCIの配送センターに到着した時点で、記録装置をオフにします。したがって、トラック輸送・鉄道輸送・海上貨物船輸送(南島からの商品の場合にはフェリーも含む)の間も、通常15秒から30秒おきにカーゴ内の温度が記録されています。JCIで航空便を利用するのは、特定の商品に予想を上回る需要があり、供給不足が懸念される場合に限っています。

 

(2)みつばちは巣や巣箱内の温度管理がたいへん上手です。暑い場合には羽を動かして風を起こすことで温度を下げ、寒い場合には筋肉を動かすことによって巣内を暖めます。自然の環境下では、みつばちは日陰になる場所、たとえばよく茂った木の枝の下に巣をかけます。巣内を暖めるのは、幼虫がはちみつを食べやすくするためです。みつばちの巣内の温度は、わたしたちが想像するよりも温度が高いのです。

 

ところがその一方で、37度を超えるような温度で保管すると、はちみつの品質が低下します。この事象には二つの要因があります。温度と時間の関係です(温度よりも時間が問題です)。もしはちみつが、ごく短時間なら、非常な高温にさらされたとしても、品質には大きな変わりはないでしょう。ところが、極端な高温ではなくても、そこそこの高温環境に長時間おかれると、短時間の非常な高温環境よりもずっと大きな影響が起きることが考えられます。

 

たとえ、赤道付近の航行中にカーゴ内の温度が上昇したとしても、それは全航行時間のうち、ごく限られた時間にすぎません。

 

タウランガは南緯37度に、東京は北緯35度に位置します。タウランガ-東京間の航行時間は通常11日です。つまりコンテナ船は、毎日平均、緯度6.5度分を北上することになります(北緯でも南緯でも、1度あたりの距離には差がありません)。緯度1度分(およそ111キロメートルあるいは60海里)を北上するには、3.7時間かかる計算になります。これは11日の全航行時間のうち、赤道を通過する時間は、たったの1.4%にしかすぎません。

 

(3)世界気象機関

https://public.wmo.int/en

関連ウェブサイト 

https://worldweather.wmo.int/en/city.html?cityId=653

https://latitude.to/map/id/indonesia/cities/pontianak

https://www.weforum.org/agenda/2020/09/why-does-land-warm-faster-than-oceans/


(4)NZのはちみつ生産会社は、通常摂氏16度から26度までの温度で保管することを推奨しています。これは、人工的に非常に細かく結晶化させた状態を保つためです。液体のはちみつはそのような低い温度で保管する必要はありません。JCIが輸入するはちみつはすべて、24時間摂氏20度で保管しています。

 

Shipping temperature records | updated 2022.2.18