はちみつ製造者はどうやって品質管理をしているの?というご質問を頂戴することがあります。ところがこれに対し、「これが要点です!」と簡単にお答えできるようなものではないのです。
敢えて一言でお答えするなら、温度管理が鍵だと申し上げましょう。みつを作るさまざまな段階で、みつばちは驚くほど上手に温度管理をしていますし、はちみつを処理する過程で適切な温度管理をしている養蜂業者・パッキング業者は、品質の高いはちみつをつくることができます。
はちみつ処理の方法は、製造者により非常にさまざまです。「NZ産」「純粋はちみつ」「天然はちみつ」というような文言が、はちみつの品質を示すわけではありません。
JCIはNZ産の各種はちみつを、複数の製造元から輸入しております。この経験から、はちみつの品質には大きなばらつきがあることを実感してきました。豊かな専門的知識・技術を活かして生産されたはちみつがある一方で、返品せざるを得ないようなひじょうにお粗末な商品もありました。
製造者による差が大きいとはいうものの、弊社にはちみつを供給している製造元を視察したところ、長い経験と責任感を併せ持つ製造者は、品質・パッキングの管理がしっかりしていることがわかりました。
(「経験」と「責任感」は非常に大切です。マヌカはちみつの人気に便乗する怪しげな会社が次々と出現し、いい加減なブランドが蔓延することになったからです)
当たり前のことながら、蜂は、はちみつに惹きつけられます。蜂は、パッキングする作業場に侵入しようとします。このため、取り出したはちみつを貯蔵するドラム缶のなかに蜂が落ちてしまうこともあります。はちみつをフィルターで濾過する時には、このような不純物を取り除きます。
濾過されたはちみつを容器に充填する際に、もし作業場に蜂が入り込めたとしたら、その蜂は容器内のはちみつを食べようとします。みつだけを食べてうまく逃げる蜂もいるでしょうが、容器に落ちてしまい、そのまま蓋が締められることもあり得ます。
そういうわけで、はちみつのパッキングは、扉や窓が完全に密閉された作業場で行わなければなりません。作業場の扉等には「パッキング作業中」とはっきり書かれた大きな表示を出す必要があります。タヒ・エステート社を訪問した際には、そのような表示がきちんと使用されていたこと、そして製造施設が非常に清潔であったことに感心させられました。
モソップ社の品質管理はさらに厳重です。施設見学は登録制で、見学者はオレンジ色のベストを着用しなければなりません。こうすることでスタッフは、部外者が施設内にいることを常に意識できます。
その結果、慎重を要するパッキング作業中に部外者が問題を引き起こすおそれが小さくなります。また部外者の存在が目立つことは、安全性確保の点からも有効です。
モソップ社では、品質管理の一貫として、作業員の頭上に非常に明るい照明を設置しています。スタッフはその照明の下で、個包装の容器をカートンに入れる前に、一つ一つ検品します。
オヌク社のはちみつは、マヌカハニー・ニュージーランド社でパッキングしています。マヌカハニー・NZ社の製造部長はベテラン職人で、誇りをもって自分の仕事に打ち込んでいます。この部長は、たとえパッキング作業を行っていない時期であっても、パッキング作業内に入る見学者には、靴カバー、作業着、ヘアネットの使用を求めます。私どもが訪問した際には、まるで殺人現場の検屍官のような格好で見学してきました。
施設の運営に細心の注意を払うのはもちろんのこと、それ以外にも、はちみつ製造者は外部から調達する資材、たとえばPET容器やガラス瓶の品質にも充分な注意が必要です。
はちみつ容器は段ボール箱に入った状態で入荷します。この時それぞれの容器は箱の中で底面を上にした形で詰められていなくてはなりません。これは、段ボールの切れ端などが容器内に入るのを防ぐためです。しかしたまに製造元が間違って、容器の底面を下にした形で詰めてしまうことがあります。そうすると、段ボールの切れ端やくずが、はちみつ容器内にたまってしまいます。
ご承知のように、はちみつはドラム缶に貯蔵しているあいだに結晶化します。この結晶を溶かすため、はちみつを加熱します。どのようにして加熱しているのか、パッキング業者は通常は公開していません。タヒ・エステート社で、電気毛布のようなヒーターつきのカバーが、はちみつの入ったステンレス製の樽に掛けられているのを見た時には驚きました。この電気毛布がはちみつを一定の温度に保つのです。
高い品質を保証するための管理の上で、最重要項目を5つ挙げるとしたら、経験、訓練、注意深さ、製造スケジュールの綿密な管理、そして仕事に対する誇りだと言えるでしょう。(1)
輸送方法もはちみつの品質に影響を与えます。NZから日本への経路で、もっとも安いのがシンガポール経由です。ところがこの経路を利用した場合、シンガポールで荷物を積み替えなくてはなりません。つまりはちみつはいったん船から降ろした上2-3日の間、赤道に近いシンガポールの港で保管されるわけです。
JCIがオークランドから東京への直行便を利用しているのは、輸送カーゴに温度記録計がついているからです。これにより、輸送中のカーゴが自然の状態でのみつばちの巣内の温度よりも高い温度になっていないことを確認できます。
(1)訓練は非常に重要です。NZでは、経験豊富な養蜂技術者が不足しているからです。養蜂家の多くは、英語圏以外から最近NZに来た移民だから2019.4です。
2019.4
Quality control | updated 2022.4.17