一歳以下の乳児になぜはちみつを与えないようにと書いてあるのですか。
はちみつがボツリヌス菌芽胞を含んでいる場合があるからです。ボツリヌス菌芽胞は土壌、埃、空気中や加工されていない農産物中に見られます。ボツリヌス菌芽胞は一歳未満の乳児の場合、小腸内で繁殖し、毒素を出すおそれがあります。
乳児の腸内でボツリヌス菌が繁殖した場合、筋肉が麻痺し、非常に稀ではありますが死亡に至るおそれもあります。一歳以上の幼児であれば、腸機能が十分発達しているのでボツリヌス芽胞を摂取しても心配はありません。
私どもの知る限りでは、乳児のはちみつ摂取に対し、(たばこのように)製品ラベルに警告を表示するよう義務づけている国はありませんが、注意をよびかけるよう勧告している国や産業団体があります。
英国蜂蜜輸入・包装業協会 (the British Honey Importers and Packers Association)、英国食品基準局 (the Food Standards Agency of the UK)、カナダ保健省(Health Canada)、全米はちみつ協会(National Honey Board of the US)では、一歳未満の乳児にはちみつを与えないよう勧告しています。
NZ政府発表の指針によりますと、一歳未満の乳児にはちみつをあたえるべきではないという警告は、ボツリヌス菌にかかわるものではありません。
NZ第一次産業省による2014年7月31日発表の指針(セクション48)の核心は、マヌカはちみつの表示に関する部分です。
「ボツリヌス菌によるリスクのため乳児にはちみつを与えないよう、消費者に警告している国もあるが、NZ産はちみつの場合、ボツリヌス胞芽が見られることはきわめて稀であり、NZの乳児に対してはこの「ボツ警告」は不要であります。
上記は、全米はちみつ委員会(the National Honey Board, US.) によるHoney-A reference guide to nature’s sweetener (『はちみつ---天然の甘味料についてのレファレンスガイド(仮題)』)からの抜粋です。日本語訳はこのページ下部にあります。
しかし第一次産業省は、NZ保健省による「はちみつを一歳未満の乳児に与えるべきではない。これは乳児の食物に砂糖その他の甘味料を添加しないよう、政府が推奨していることとの整合性を確保するためである」という見解があることを、ここに報告します。
日本では農林水産省の加工食品品質表示基準、全国はちみつ公正取引協議会によるはちみつ類の表示に関する公正競争規約のいずれでも、はちみつ摂取と乳児ボツリヌス症については言及がありません。
NZとオーストラリアもこの件については政府機関や産業団体による勧告は出されていません。
乳児ボツリヌス症
乳児ボツリヌス症の発生は稀ではありますが、発症するとクロストリジウム属の細菌であるボツリヌス菌(学名Clostridium botulinum)が重篤な神経麻痺を引き起こします。1歳未満の乳児の場合、ボツリヌス菌の芽胞が口から入ると、大腸で発芽増殖し、毒素を産生させることがあります。ボツリヌス菌は自然界に広く存在しています。ボツリヌス菌の胞子は土壌、埃、空気中、生の農産物中に存在し、はちみつにも含まれ得ます。乳児の場合、腸内微生物叢(腸内フローラ)が未発達なので、乳児ボツリヌス症に感染しやすいのです。成人・子どもの場合、腸内微生物の働きが正常であれば、ボツリヌス菌は腸内微生物に捕食され、人体に害を与えません。各種保健機関や全米はちみつ委員会は、一歳未満の乳児にはちみつを与えないようアドバイスしています。全米はちみつ委員会(the National Honey Board, US.
https://honey.com/images/files/Detailed-Nutrition-Information.pdf
Infants under 1 year of age | updated 2022.2.28