JCIがお届けするはちみつはすべてPET
(プラスチックの一種であるポリエチレン容器)を使用しています。環境保護の観点から、プラスチックの代わりにガラス容器を使うべきでしょうか(a)。
総合的な結論として、JCIではガラスを使用すべきではないと考えています。とはいってもこれは弊社が決定することではありません。弊社の現在の仕入れ先はすべて、カーボンフットプリントが小さいと判断しており、プラスチックを使用しています(b)。
ペットボトルによる河川や海洋の汚染を報じる写真をよく目にします。廃棄されたプラスチックが原因で、海の生物が苦しめられ、死に至っているという報道には本当に心を痛めています。埋め立てに用いられた場合、PETが分解されるには500年以上の年月を要することも承知しています。
しかし、英国ケンブリッジ大学のサステナビリティ・リーダーシップ研究所(Cambridge’s Institute for Sustainability Leadership, CISL)の政策プログラム・ディレクター、エリオット・ワシントンは次のように述べています。「プラスチックはよくない、じゃあ何か別のものを使おう、というほど簡単なものではない。」(c)
JCIは以前、実際にガラス容器入りのはちみつを輸入しておりましたので、当事者としてPETとガラス容器の比較ができます。
容量250グラムの容器を例にすると、ガラス容器はPETのおよそ4.7倍の重量があります。輸送の際には、積載重量が増すと、使われる燃料も増加します。ただ、ガラス容器の場合、実際のカーボン・フットプリントは、容器そのものの重量比以上に大きくなるのです。
ガラス容器入りの製品を輸送する際には通常、ガラスの破損防止のため、たとえば紙類やポリエステルなどの緩衝材が必要とされます。こうした緩衝材の使用により、出荷用に梱包された製品はさらに重くなり、嵩も増すので、陸上輸送用のトラックや鉄道、海上輸送用コンテナ内でより多くのスペースを必要とします。
プラスチックは「使い捨て」だと言われていますが、スーパーで売っているレジ袋のような薄いプラスチックと、PETを同様に考えることはできません。PETは100%リサイクル可能な素材で、さまざまな衣類やカーペット(素材表示に「ポリエステル」とあるもの)、あるいは新たなPET容器に生まれ変わります。一方ガラスは、リサイクルしてもガラスにしかなりません(d)。
(ただし、ガラスやアルミニウムが何度もリサイクル可能であるのに対し、PETのリサイクルは2~3回が限度であること、またプラスチック製の袋やストローはリサイクルができないこともあわせて承知しておくべきです)(e)。
ガラスの主原料はシリカあるいは砂です。「砂」と聞くと、よい天然素材であるというイメージが浮かぶかもしれませんが、実は砂は無尽蔵の資源ではなく、コンクリートやガラス製造に用いるには大規模に採掘したり、海底を浚渫したりする必要があります。
国連環境計画は「例えば砂のように、いくらでもあるように思われている資源でさえ、現在の需要には追いついていない」と述べています。環境保護主義者で文筆家でもあるキーラン・ペレイラ Kiran Pereiraも「砂は持続可能な資源ではない。埋蔵量がどれほどであるのかを査定することが困難になってきており(…)また環境に対する悪影響が増している」と警告しています(f)。
ガラスの製造やリサイクルには、シリカを溶かすために、摂氏1500度から1700度という高温で処理する必要があること(ガラス融溶炉は燃料として天然ガスを使用)を考えれば、ガラスのカーボン・フットプリントは、さらに大きなものであると言えるでしょう(g)。
ペット容器業界とガラス容器業界は激しく競合しています。いずれの側も、自分たちの製品はきちんとリサイクルされれば、環境を汚染することはないと、説得力ある議論を展開しています。
それぞれの業界に雇われた科学者たちが、このように対立する議論を持ち出してきた時には、一体誰を信用すればよいのでしょうか。
PETにせよガラスにせよ、環境への悪影響の最大の要因は、きちんとリサイクルしないという、人間の不作為であるとJCIは考えています。リサイクルを怠ることによって生じる悪影響について、素材を責めることはできません。例えば子どもが悪戯で投げたレンガで窓が割れた場合に、レンガを責めることができないのと同じです。
弊社がガラスよりもPETを選ぶのは、PET容器のほうがカーボン・フットプリントが小さいという見解からですが、そうは言っても、いずれの素材も現在の環境では最良の選択ではありません。
自然下でも養蜂の場合でも、みつばちは暗い巣の中でみつを食べるものだということを念頭に置けば、アルミニウム製の容器が最適解です。光を通さないことから、はちみつ中の健康によい成分が損なわれません。また軽くてかさばらず、100%リサイクルが可能である上に、アルミニウムの原料となるボーキサイトは豊富にあると報じられています*。
将来的には、植物を原料とした製品が選ばれるようになるかもしれません。例えば竹は、丈夫で再生可能、堆肥にもなるうえ、見た目も美しい素材です。竹やココナッツ、サトウキビや、さらにはキノコ類を利用して、持続可能な食品包装が始まっているところに希望が持てます。
一方、PETの主原料は石油ですが、製造に必要な温度は摂氏150度から280度とガラスに比べるとはるかに低温です(h)。
食品容器の素材として何を選ぶかにかかわらず、大切なことは容器をリサイクルすることです。PETにもガラスにも、それぞれの利点と欠点がありますが、幸いいずれもリサイクルは完全に可能です(i)。
私どもは常々、日本で一般家庭ゴミ・産業廃棄物の分別とリサイクルのシステムが発達していることについて、感嘆しております。リサイクルに用いられる設備や機材は、非常に高性能であるようです。このような機材が海外に輸出され、世界中で使われるようになってほしいものです。
註
(a)PETとはテレフタル酸ポリエチレン(polyethylene terephthalate)の略称。
(b)JCIが取り扱うはちみつのPET容器は、ファームパック社(Pharmapac)製。同社は廃棄物実質ゼロ操業で、所在地はオークランドのノースショア。
(c)「プラスチック包装を捨てることのほんとうの対価は?」BBC 2018年7月6日付記事。リチャード・グレイ執筆。2021年2月17日閲覧。
https://www.bbc.com/worklife/article/20180705-whats-the-real-price-of-getting-rid-of-plastic-packaging
関連文献「ガラス対プラスチック---どちらがより有害か?」Environmental Technology 2019年2月13日付記事。2021年2月17日閲覧。出版元は、主として科学分野を扱う、英国のマルチメディア出版社International Labmate Ltd。
https://www.envirotech-online.com/news/business-news/44/breaking-news/glass-vs-plastic-which-bottles-are-worse/48297
(d)「ガラス製品リサイクルの真実」Glass Packaging Institute (GPI)ウェブサイト記事。2021年2月15日閲覧。GPIは北米のガラス容器製造の業界団体。
https://www.gpi.org/glass-recycling-facts
(e)「プラスチックは何回リサイクルできるか?」Environmental Technology 2018年5月25日付記事。2021年2月17日閲覧。
https://www.envirotech-online.com/news/environmental-laboratory/7/breaking-news/how-many-times-can-plastic-be-recycled/46064
(f)関連文献 「生態系と生物多様性---持続可能な砂礫の発掘方法の探求開始」国連環境計画2019年1月3日付。2021年2月18日閲覧。
https://www.unenvironment.org/news-and-stories/story/search-sustainable-sand-extraction-beginning
ただしこの記事の見出し「持続可能な砂礫」は誤解を招く。問題になっているのは、砂は限りある資源だという点であり、そもそも「持続可能」ではない。
キーラン・ペレイラは、サンド・ストーリーズの制作者。サンド・ストーリーズについては https://www.sandstories.org/.
https://www.theguardian.com/cities/2017/feb/27/sand-mining-global-environmental-crisis-never-heard
(g)「ガラス製造は、主として天然ガスを燃料とするエネルギー大量使用型の産業である」合衆国エネルギー情報(EIA)ウェブサイト記事。2013年8月21日付。2021年2月19日閲覧。EIAは合衆国エネルギー省の組織の一つ。https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=12631
(h)「テレフタル酸ポリエチレン(PET):その包括的な見直し」SpecialChemウェブサイト記事。2021年2月15日閲覧。SpecialChemは化学物質と素材に関する情報を提供している。
https://omnexus.specialchem.com/selection-guide/polyethylene-terephthalate-pet-plastic
(i)使用済み容器はリサイクルごみ箱に入れれば、いつも確実に実際にリサイクルされるというのは誤りである。リサイクルもビジネスであり、その時、そのリサイクル製品に対する商業的な需要がなければ、焼却されたり、埋め立てに用いられたりすることがある。この事情は各国あるいは各自治体の規制に依るところが多い。
*タスマニアン・レザーウッドはちみつには、アルミニウム容器が用いられている。タスマニアン・レザーウッド(学名Eucryphia lucida)は、クノニア科の灌木で、タスマニア島固有種(JCI社員の間で人気のはちみつ)。
Container type comparison | updated 2022.2.28